台北の老建築といえば迪化街が有名ですが、艋舺(現萬華)にも日本時代の建物がわずかながらも残されています。
その一つ「萬華林宅」が星巴克艋舺門市店として2016年に生まれ変わりました。
平日の午前中だったからか、はたまた場所柄か客の姿もまばらで、とても落ち着けます。
PCを持ち込んで長居する人が多そう。
台湾のスタバで初めてサイフォンコーヒーを導入したとか、メニューにもこだわりを見せています。
日本で言うところのスターバックス・リザーブみたいな位置づけでしょうか。
さて、建物について。
1935年の日本時代に建設された萬華林宅は、随所に日本の影響が見受けられる日中西折衷様式になっています。
一階には林さんが商っていた果物や野菜の倉庫、居室、キッチン、ダイニングルーム、トイレなどがあったよう。
庭には地下室があったらしく、戦時中は防空壕として使われたとか。
鉄製の手摺は武器を作るために接収されたというから、なんだか物々しい当時の様子が伺えますね。
いびつな外観をしているのは、建設当時ここに道路を作る計画があった為、あらかじめそれを避けたからだとか。
今になってみれば、そのお陰でこの独特の形状が生まれたことに感謝。
外壁は赤レンガと薄色赤レンガ、洗石子を見事に使い分け変化を与えています。
洗石子とはモルタルの表面を洗い出して自然な風合いを再現する仕上げ工法。
台灣煉瓦株式會社の一級品レンガ(全部で4段階あったらしく、その中でも最上級品にはTR-Taiwan Rengaの印があったそうです)が使用されています。
正面のバルコニーの手すりも2階が柳葉型(柳の葉のような楕円形を指すそうです)、3階が菱形、4階が直線型と異なるデザインを用いているところもにくい。
内部の床も階によって色が異なるというこだわりよう。
さぞかしお金持ちだったのでしょうね〜。
個人的には階段のデザインにぐっときました。
テラゾーの硬質で冷たい質感なのに、曲線が描く優美なフォルムがヌルっとしていて何故かとても艶めいて見えます。
トイレもその横にある手洗いもレトロ。
当時は水桶として使用されていたそう。
4階には公媽廳があります。
先祖とかいろんな神様を祀る仏壇みたいなもの。
外観は入母屋式で(鬼瓦も付いています)日本的ですが、入口側の庇にはコリント式と中式の柱が採用されていたりとミクスチャな作り。内部には菊と孔雀、白鷺と蓮花が描かれた美しい壁画があるようです。
3,4階は平時は非公開ですが時々公開しているようです(3階には林さんちで使用していた時計やかごなどの雑貨、写真が展示されているそう)。
とまあ、こんな具合に歴史的価値の高い建物なのですが、そんな場所でお茶ができるなんてなんとも粋ですね。
売り上げの一部は古建築の保護基金として使われるそう。
スタバが発行している萬華林宅案内と艋舺MAPも置いてあるので、これを持って散策すればより一層萬華エリアを堪能できると思います。
※2017年4月時点の情報です