湖口の街は1893年に大湖口火車站房が開業したことにより発展しました。
当時の駅は現在天主堂がある場所に立っており、老街・横街・舊街・新街(現老街)のエリアからなっています。
現在の老街は1914年(大正3年)に建設された一番新しいエリアなので、新街と呼ばれているそう。
当時の大湖口は商業でとても繁栄していました。
しかし1929年に現在の湖口駅にあたる新しい駅が北の方にできるとそちらが新市街となり、徐々に衰退し老街となってしまったとか。
そんな老街の建物は、大正時代に日本で流行った建築様式が反映されています。
といってもそれは建物全面に限った話で、内部は大体が住宅件商店となっており、道の前面に店舗、住居部分や中庭を挟んで倉庫という街屋建築(中国南方の建築様式が反映されたスタイル。台湾以外にも東南アジアなどの華僑街に見られる)になっているそう。
すべての建物が亭仔脚(騎楼)と呼ばれるアーケードで繋がっており、各々バロック調の特徴的なデザインを競い合っていますが、赤レンガで統一された建物群には連続性があり、とても美しいです。
以下、湖口老街の吉祥模様デザインコレクションです。
・春虎:1999年に発生した921地震の際に破損してしまった家屋も多々あったそうで、そういった建物は元の屋号が分からなくなってしまったため、「春虎」と付けたとか。
春虎という店がたくさんあった訳ではないようです。
・祈求吉慶、つまり吉祥の象徴。 中国語の発音がそれぞれ同じことから、祈=旗、求=球、吉=戟(ほこ。中国に古くからある武器)、慶=磬(けい、きん。中国に古くからある楽器。石板または玉板や銅板をばちで叩いて音を出す)を表している。
2人の将軍のうち1人が右手に旗と左手に球、もう1人が戟と磬を携えた彫刻や絵画がよく見られるらしいが、こちらは人物は描かず物だけで表現したバージョン。
・福禄壽三星:幸福、封禄(財産、富貴)、長寿を具現化したもの。
お爺ちゃんトリオなので勝手に福禄寿三星かと思っていますが、よくある描かれ方としては、福星は赤い官服を身につけている、禄星は坊やを抱いている、寿星は杖と桃を携えているらしい(と、国立故宮博物院のHPに説明されてます)。
桃も杖も坊やもいないので、福禄壽三星ではないのですかねぇ〜。
そして右側には猫と蝶、左側には葡萄と兎のレリーフが彫られています。
・猫と蝶:中国では8,90歳を耄耋(ぼうてつ)の歳と言うそうで、これは高齢の老人という意味。耄は猫と発音が近く、耋は蝶と発音が近いので「寿居耄耋」という長寿のおめでたい意味になるそうです。この図案には描かれていませんが、菊(居と発音が近い)と壽石が一緒に描かれることが多いそう。
・葡萄:実を多く付けるので、子孫繁栄を象徴する。
・兎:不老不死、再生の象徴。うさぎが月で不老不死の薬を作っているという中国の伝説にちなむ。また、兎は繁殖能力が高いので子孫を多く残し、福を呼ぶという意味もあるとか。
・鹿鶴:鹿(六と発音が近い)と長寿の象徴である鶴(和と発音が近い)が「春」に花の咲く庭で遊んでいる。つまり「六和同春」となり、六和は天地東西南北、それが全て春のように長閑(のど)かで穏やかである。という意味だそう。
また、鹿は禄とも発音が近く、禄には天から授かった幸運という意味や、福禄壽の禄(封禄)、つまり財産の意味もあるらしい。
・鹿の角:角は地上の権力を象徴し、そのよりどころとなる「力」を表現する。
ファサードにあしらわれたレリーフは素晴らしく、ただ見ているだけでも、かわいらしくてほっこりしますが、それぞれに吉祥の思いが込められていると知ると、より一層興味深く感じられます。